さらに冬のテント1泊の装備+アイゼン+ピッケル
合計15キロ
ほぼ半年ぶりのテント泊山行をする身には少々ヘビーだったようで。
まずはフォーチェ村(945m)からピラート湖(1900m)まで、夏の日帰りだったら3時間かからないところを4時間かけて登った。「どうやら今の体力でこの荷物だと夏の5割増の時間はかかるな。日が落ちるのは4時半、今はもう12時。こりゃ宿泊予定地まではつけんね。思ったより雪あるし」と本来の行程半ばであきらめが入った。今や妻ばかりか子もある身、無理は禁物だ……というよりも、いいわけ(伊語でベッラ・スクーザ〝美しい釈明〟)の種がまたひとつ増えた。ただの体力不足だよな。
今回の日中はPLフィルターを初使用
下のくぼみがピラート湖。今は雪の下。
我の先に道はなく、なんだっけ?
それからはさらにゆっくり歩いて、14時半、稜線に出たところでギブアップ。風も強くなってきたので、稜線直下のジリオーリ避難小屋(2233m)を今夜の宿と決める。誰もいない小屋(といっても5畳ばかりの牢屋)を占領できるし、テントを張るより暖かそうだし、日和る。
ジリオーリ避難小屋。左側の小さな屋根の部分だけが一般開放されている
こんなに早く行動を終えるのは久しぶりのことだったので、夜までどうしよう、なんて思ってたけれど、雪を溶かして水を作ったり、飯を食ったり、撮影をしたりしているうちに気づけば夜中過ぎ。
撮影といえば今回は色々勉強になった。地吹雪が吹きつけるなかで夕景の撮影に臨んだのだけれど、レンズが濡れて、水滴のせいで妙なフレアが出来るのだ。しかもまともに目も開けられないような状況なので一枚一枚確認している余裕がない(というより、その余裕のあるなしがまた技術なのだろう)。これには困った。後でネットで色々検索したら、こういう時はまずレンズとカメラをシャワーキャップで保護する。そして濡れたレンズは「拭く」よりも、ブロアーをポケットに入れておいて、そいつで水滴を「吹き飛ばす」のがいいらしい。家で試してみたらたしかに結構きれいになるもんだ。水滴はクロスじゃ拭き取れないし。
白くかすんでいるのが地吹雪
写真は風も聞こえず、静かですね
ラーガ山地とグランサッソ
北斗七星とヴェットーレ山
10分も長時間露出するとこんなぐあいに星明かりがよれよれ。
夜半頃から飛ばされそうないきおいの風が吹きはじめた。小屋に吹きつける石つぶて混じりの風の音でなかなか眠れない。とりあえず体がやすめばいいや、と開き直った。酒もビール1缶じゃ足りなかったな。次は強くて軽いグラッパにしよう。強い台風並みの風。まあ、朝には止むだろう、そしたらいよいよ白く輝く稜線闊歩だ。それでこそ、ここまで登ってきた甲斐があるってもんさ。。
ところが、朝のほうがひどかった。6時過ぎの日の出とともに行動開始の予定が、風のいきおいは収まらず、その上、雲の中にいるようでホワイトアウト。
こりゃ下手すると一日停滞か、下界の家族は心配するだろうな、とりあえず携帯が通じる場所で良かった……と小屋の入口から外を心細く眺めていたら、9時くらいから風はともかく、どうにか視界はましになった。稜線歩きは論外。結局勝手知ったる登りと同じルートを下ることに。久しぶりに耐風姿勢なんてものをやった。ブロッケン現象も一瞬だったけれど初めて見た。カメラはザックの中にしまったまま、まっすぐフォーチェ村に帰投。
夜、牢屋みたいな小屋にこもって、ロウソクの明かりをたよりにラジオのジャズを聴くのはなかなか良かった。天気予報番組がぜんぜんないのには閉口させられたけれど。なんとも自由な気分。次はテントを持たずに軽量化して、また帰ってこよう。
あと、まっとうな三脚が欲しくなった。ジッツオのマウンテニアシリーズ1型1541を狙っている。マウンテニア、なんて山岳写真向けらしくていいじゃないか。俺はネーミングやらブランドやら宣伝コピーに本当に弱い。
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2010/1/30追記。たまらずジッツオGT1541マウンテニア購入。ebayで韓国の売人から送料込み4万円ほど。自由雲台も新調。KTSのPRO-40というちょいと玄人好みの東京の町工場産直もの。どちらも日本の実家で僕を待っている。一時帰国が近くなると、毎回こうしてイタリアからネット通販ラッシュをかける。ぼちぼち古本買い漁りも始めねば。