エン先生(哏德全 EnDeQuan)が亡くなった。享年50歳。中国雲南省タイ族の民族楽器フルス(ヒョウタン笛)演奏・製作の第一人者であり、何よりも僕の大事な友人だった。
いつかまた会いに行こうと毎年思っているうちに10年がたち、急逝の知らせを受けた。
中国留学時代に昆明でエン先生に習った笛をならべて祭壇を作り、線香をあげ、好きだった白酒のかわりにイタリアのグラッパをささげ、彼の独奏アルバムを聴きながら、飲んでいる。
しばらく、遺影を見つめ、撮影に没頭する。
「ファンティエン(飯田)」、懐かしい声が聞こえてくる。
あの頃。
夜になれば雲南省昆明市文林街のカフェ・ラビアンローズでギターをかきならし、酔っぱらった留学生・中国人たちを下手な歌で踊らせては昼まで起きず、学校にも行かずじまいの不良留学生だった僕と、雲南の民族音楽を求めてやってきた好青年サトル君と、エン先生の工房によく遊びに行った。その度、先生はいかにも嬉しそうな笑顔で、さあさあ (lai lai)とタバコを勧めてくれ、故郷の笛を教えてくれた。
先生が笛を奏でれば、しばし、時の流れが止まる思いがした。
未だ見ぬ彼の生まれ故郷の緑が、人々が、歌が、その全てがそこに見えた。確かに見えた。
どれだけ世話になったことだろう。
また一人、恩を返す間もなく、余りにも早く、往ってしまった。
エン先生、本当にありがとうございました。
日本人の一番弟子、サトル君のリポート
Se ne è andato il mio maestro di flauti cinesi, En Dequan, all'età di 50 anni. Non ho avuto né un altra occasione di rivederlo, sono passati 10 anni dall'ultima volta, né quella di ringraziarlo per tutto quello che mi ha offerto all'epoca in Cina.
Grazie mille, maestro.
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Accidenti, sono sempre grandi persone che se ne vanno presto. Che possa riposare in pace.
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